チャレンジドLIFEでは、厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)を前に、発達障がいへの認知や理解についての全国調査を実施しました。
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本調査の目的・特徴
今回初めて、自分自身も家族も発達障がい当事者ではない人を対象に含め、社会全体における発達障がいへの認知や理解に関する調査を行いました。回答者1,304人のうち68.8%(897人)が「自分自身も家族も当事者ではない人」であることが、本調査の特徴です。
発達障がいの現れ方はグラデーションのように幅が広く、当事者とそうでない人の明確な線引きは困難で、多くの当事者や、診断はなく同様の特性を持つ方が社会の中に存在しています。社会における発達障がいへの認知や理解の状況を知るためには、当事者や関係者(家族、支援者など)だけでなく、当事者とは積極的な関わりがない多数の方も対象として調査を行う必要があると考えました。
調査概要
調査方法 :インターネット調査、一部zoomやメール(自由記述)での個別ヒアリングを実施
調査期間 :2021年3月16日~26日
有効回答者数 :1,304人
<回答者内訳>
性別(図1)
男性:130人(10.0%)
女性:1,165人(89.3%)
回答なし:9人(0.7%)
年代 (図2)
10代:15人(1.2%)
20代:63人(4.8%)
30代:394人(30.2%)
40代:599人(45.9%)
50代:191人(14.6%)
60代:35人(2.7%)
回答なし:7人(0.5%)
地域(図3)
北海道:30人(2.3%)
東北:38人(2.9%)
関東:418人(32.1%)
中部:169人(13.0%)
近畿:475人(36.4%)
中国:44人(3.4%)
四国:30人(2.3%)
九州:83人(6.4%)
海外:17人(1.3%)
発達障がい当事者との関係(図4)
自分自身も家族も当事者ではない人:897人(68.8%)
当事者の家族:346人(26.5%)
当事者:61人(4.7%)
子どもの有無、年代(複数回答)(図5)
18歳以上の子どもがいる:250人
18歳以上未満の子どもがいる:903人
子どもはいない:192人
子どもの発達障がいの診断、不安について(複数回答)(図6)
子どもの発達に不安はない:568人
子どもの発達に少し不安がある:172人
子どもに発達障がいの疑いがある:133人
子どもに発達障がいの診断がついている:235人
調査結果の概要
(1)発達障がいの認知度は高いが、当事者や家族の多くは十分に理解されているとは感じていない
(2)発達障がいの有無に関わらず、共通する日常の困りごとが存在する
(3)当事者や家族に向けられるネガティブな視線が、「理解されていない」と感じる要因につながる
調査結果のポイント
(1) 発達障がいの認知度は高いが、当事者や家族の多くは十分に理解されているとは感じていない
1,302人(99.8%)が「発達障がい」という言葉を「知っている」と回答。また1,025名(78.6%)が「どのような障害かをだいたい理解している」と回答。発達障がいの一般的認知度は高いといえる。また、「発達障がいは、自分とはあまり関係がない」と思っている人は154名(11.8%)にとどまり、「自分や身近な人が発達障がいかもしれないと思ったことがある」人は1,061名(81.4%)にのぼることがわかった。(図7)
しかし、当事者・家族208名へのヒアリングによると、188名(90.4%)の人が日常生活で十分に理解されていると感じていない(図8)。このギャップが当事者の困難につながっていると考えられる。
(2)発達障がいの有無に関わらず、共通する日常の困りごとが存在する
一人ひとりが持つ「特性」(個人の中で一貫して出現する行動や態度の傾向)の中でも、発達障がいの困りごととして出現しやすい13の項目について「自分自身に当てはまる」「家族に当てはまる」「知人に当てはまる」ものを複数回答いただいた。
その結果、「1.片付けが苦手」「13.集団になじみにくい」「7.コミュニケーションが苦手」「2.こだわりが強い」「9.感情コントロールが苦手」「5.没頭すると切り替えが難しい」「12.興味関心が移り替わりやすい」は、発達障がいの有無に関わらず「自分や身近な人(家族・知人)に当てはまる」という回答が多い。(図9)
さらに、「自分や家族に当てはまる特性」を「当事者家族(本人・又は家族が当事者)」「非当事者家族(家族に当事者はいない)」に分けた結果、回答傾向が類似していることが分かった。発達障がいの有無に関わらず、同じような困りごとが身内の中にあると言える。(図10)
各特性の回答数に占める当事者家族・非当事者家族の割合を見ると、「1.片付けが苦手」「2.こだわりが強い」「5.没頭すると切り替えが難しい」「12.興味関心が移り替わりやすい」「13.集団になじみにくい」が特に一致している。中でも「1.片付けが苦手」は非当事者家族の占める割合のほうが高かった。
逆に「3.手先が極端に不器用」「6.読み書きが極端に苦手」「11.計算が極端に苦手」は当事者家族の割合が圧倒的に高く、当事者家族に特有の困りごとと言える。(図11)
(3)当事者や家族に向けられるネガティブな視線が、「理解されていない」と感じる要因につながる
当事者と家族へのヒアリング調査(回答数193)によると、「発達障がいが理由で幼稚園の入園を拒否された」「わがままのような行動や、親の躾が悪いと思われる特徴が多く、ほかの子と同じであることを求められる」「書字障がいのためタブレットの使用を希望したが、却下された」などの体験が寄せられた。
当事者は努力や我慢ではカバーできない特性を持つため、適切な環境や配慮を必要とする。しかし、努力によって対応できるか否かの違いが周囲から分かりづらいため、ネガティブな見方が生まれ、当事者や家族が「十分に理解されているとは言えない」と感じる要因に繋がっていると考えられる。
十分に理解されていないと感じたエピソード(ヒアリング調査、自由記述より一部抜粋)
・発達障がいが理由で幼稚園の入園を拒否された
・書字障がいのためタブレットの使用を希望したが、却下された
・学校の先生に、わが子の特性について何度もお話を重ねたが、理解を得られなかった
・わがままのような行動や、親の躾が悪いと思われる特徴が多く、ほかの子と同じであることを求められる
・発達障がいの子とは遊ばないようにと自分の子どもに言っている保護者がいるのを知っている
・発達障がいについて伝えたことで、相手との関係や状況が悪化してしまうことがあった
・ママ友に打ち明けたところ、興味本位で聞いてきてマウンティングをとる人がいた
・田舎に住んでおり、人と違うことを極端に嫌う地域性から、健診で発達支援センターに行くことを勧められたが、「そんなところに行くと変な噂をされるから行くな」と親に言われた
・ほかの子どもたちと比べられるので、親戚の集まりには行かないようにしている
(4)発達障がいの困りごとを軽減する対処は、多くの人たちの困りごとも軽減する
「時間を忘れて熱中しそうなときは、タイマーをかけておく」「不器用でも使いやすい文具を使う」「指示は短い文で、1回に1つの内容にしてもらう」「苦手なことを周りの人に伝えておき、一人で抱えない」などが、当事者や家族から多数寄せられた。
これら日常の困りごとへのちょっとした対処は、発達障がいの有無に関わらず、同様の困りごとを抱える多くの人にも効果があると考える。
困りごとへの対処方法(ヒアリング調査、自由記述より一部抜粋)
●自分に合ったルールを決める
・片付けが苦手な子どもに、物をしまう場所が見てわかるよう物の写真や名前を貼って示す
・カバンの中身はいつも定位置を決め、仕事や学校は毎日同じカバンを使うようにしている
・時間を忘れて熱中しそうなときは、あらかじめ作業時間(25分)・休憩時間(5分)を決めてタイマーをかけておき、作業目途や時間を意識する
・忘れ物が多いので、当日慌てないよう、前日には玄関の見えるところに準備しておく
・自分がミスしやすいことを書き出し、注意点や優先順位を可視化し、見えるところに貼って確認する
・仕事の電話が苦手。敬語がすらすら出てこなくて焦るので、事前に話す内容をメモしている
・集団になじみにくいので、自己紹介の時に一人が好きであることを伝える
・集団でいると非常に疲れるので、必ず1人で静かに過ごす時間を取るようにしている
・靴下にこだわる息子に同じ靴下をたくさん揃え、いつでもはけるようにした
●アプリやグッズを使う
・不器用でも使いやすい文具やグッズ(握って使えるコンパス、すべりにくい定規、ゴム製の靴ひもなど)を使う
・予定をスマホに入力しておき、通知が来るようにしている
・読み飛ばし対策のため、教科書や宿題を拡大コピーする
・人の声や苦手な音がある場所では、イヤホンや耳栓、イヤーマフを使う
・スマホを見すぎるため、使用時間制限をかけて、時間を超えると使用不可にすることで強制的に使えないようにする
●関係者に相談・配慮を求める
・指示は短い文で、1回に1つの内容にしてもらう
・口頭指示だけでなく、目で見て確認できるようにイラストや文字で提示してもらう
・苦手なことを周りの人に伝えておき、一人で抱えない(忘れやすいので声をかけてもらうよう周りの人にお願いする、遅刻するかもしれないと先に謝っておく、片付けが得意な人に手伝ってもらうなど)
・関係者に事前に特性を共有し、必要な配慮を具体的に、無理のない範囲でお願いする
・相談機関、専門家を探して相談する
考察
発達障がいへの認知度や理解は高まってきているものの、当事者や家族の実感としては、まだまだ十分な理解があるとは言えない現状が明らかになりました。
発達障がいによる困りごとの中には、当事者特有のものではなく、多くの人が感じている困りごとと一致しているものがあります。今回の調査結果より、発達障がいへの理解が広がり、困りごとに対する適切な環境や対処がとられることで、当事者だけでなく多くの人にとっても過ごしやすい社会に繋がるのではないか、ということが見えてきました。
チャレンジドLIFEは現在、発達障がい児を育てる目線を活かし、あらゆる子どもの発達を促す玩具商品を生むため、乳幼児玩具メーカー「ピープル株式会社」様(https://www.people-kk.co.jp/)との共同研究に参画しています。
今後も様々な分野で「発達障がいの目線で、みんなの生きやすさを叶える」を目指し、活動して参ります。
※今後も本調査結果の分析を、様々な切り口で分析・公開していきます。