· 

【インタビューvol.1】プロのシェフと障がいのある方が一緒に働く空間

 

プロ×障がいのある方が繋がり「働くこと」にワクワクする、みんなの希望になる空間

 

■ユニバーサルレストラン「ル・クロ・ド・マリアージュ」(ル・クロ)ってどんなお店?■

“様々な個性がある人間が認め合える店作り”を目指す本格フレンチレストラン。

 

バリュー・ラボ・フクロウ(就労移行支援・就労継続支援A型事業所)に通う様々な障がいのある従業員(キャスト)が、プロのシェフやホールスタッフと一緒に働いています。

 

(写真)ル・クロはとってもおしゃれなフレンチレストラン!どのお料理もスイーツも本当においしい!

 

 ―ここが「ユニバーサルレストラン」ということを知らずに来られるお客様もいらっしゃるというのは、すごくいいなと思いました。障がいのある方が、一般のお客様が来るお店で働くという場はあまりないと思います。障がいのある方とともに働く中で、どのような工夫をされていますか?

 

瀧:ここは本当にいろんな人たちがお客様として来てくださるので、私達は様々な経験ができ、その中での気づきもいろいろとあります。

レストランの仕事は調理以外にも、接客や掃除など、たくさんの種類があります。支援員も入って、本人のやりたいこと、できることを探していくようにしています。仕事としてやるからには、やっぱり責任を持ってやらないといけないことも多い。その時に、「やりなさい」と与えた仕事よりも、得意なこと、本人が選んだものを仕事にすると、がんばれるんです。

 

また、「ル・クロ」での支援は、支援し続けるのではなく、だんだん支援を抜いていく、本人の力で乗り越えていけるよう見守る、というイメージです。

(写真)レストランに併設されるチャペルで、障がいのあるキャストの皆さんがプロと一緒にスイーツを作っています。 まかない作りを担っているキャストも。

 

■児童発達支援 放課後等デイサービス「ル・クッカー」ってどんな所?■

シェフたちが料理・お菓子づくりを伝授するレストランが舞台の放課後等デイサービスです。プロと繋がり、プロから学ぶ経験を通して子どもたちの可能性を広げることを目的とした場所です。「働くこと」の意味や奉仕の喜びを体験してもらいます。

 

―「ル・クロ」では、「ル・クッカー」の子どもたちも調理などの体験をしているんでしょうか?

 

瀧:そうです。厨房に入るんですよ。子どもたちはコック服を着たり、お気に入りのエプロン持って来たり。それも選んでもらうようにしています。

ほとんどの子がコック服を着たいと言いすし、家でコック服を着て料理がしたいと言って、コック服を買い取る子たちもいます。 

子どもたちは、やっぱりプロと同じ、「本物扱い」をしてもらうと気分が上がるんですよね。

 

―それは子どもたちも親御さんたちも、うれしいですよね。

 

瀧:そうなんです。そして、料理がおいしいと満たされるんです。

放課後等デイサービスから帰って来る時って、たいてい子どもたちは疲れていて機嫌が悪くなりやすい時間帯なのですが、「ル・クッカー」に通っている子たちはおいしいものを食べてお腹を満たしているので、ご機嫌なんですって。その点でも親御さんたちには喜んでもらっています。

 

地域も、年齢も、受給者証のある子も、ない子も。ごちゃまぜにウェルカム

 

―通常、放課後デイサービスといったら、家の近くで探すのが一般的じゃないですか。でも「ル・クッカー」には他府県から電車に乗って来ている子どもたちもいると聞きました。どういう経緯で来られるのでしょうか?

 

 瀧:そうですね。「ル・クッカー」は大阪にありますが、奈良、京都、滋賀から来る方もいらっしゃいます。やっぱりメディアに取り上げていただいた影響が大きかったですね。本当のことを言うと、同じ大阪市から受け入れる方が行政との手続きもやりやすいんです。でも、メディアを見て「ここできっかけを掴みたい」「経験をさせてほしい」という問い合わせも多くて。そういう親御さんたちの強い想いや願いを叶えたいって思うんですよね。料理にこだわって「ル・クッカー」を選ぶというより、「ここと繋がっておきたい」と言って月に1回でも……と通われる方もいらっしゃいます。

(写真:瀧 幸子さん)

 

―「ル・クッカー」に通っている子どもたちは、どんな年齢構成になっていますか?小学生と中学生はできることや興味が違うと思うのですが。 

 

瀧:放課後等デイサービスは、一般的には、利用曜日が決まっていて学年やメンバーが固定されていることが多いですが、「ル・クッカー」では小中高生合わせて110人という上限だけ決めていて、1日ごとの予約制になっています。あえて曜日や時間を決めず、毎回違うメンバーになるようにしているんです。

そして、シェフがその日に来るメンバー構成を見てメニューを決めています。だって、先にメニューを決めると、それができる子しか来ないじゃないですか。

 

でもやっぱり定期利用をお勧めはしています。週に1回くらい来てくれたら変化が大きくて。学校に行けない子も多いのですけど、ある日突然「学校に行ってみようかな」とかなるんですよ。私はこの効果を "ル・クッカーマジック"と呼んでるんです。

 

偏食がある子たちもすごく多いんですよ。だけどここでプロと作ると「食べてみようかな」ってなる。いつもはめんつゆとうどんしか食べませんっていう子がラザニアを食べた日は、お母さんは泣いて喜んだんですよ。

家では難しいかもしれないけど、ル・クッカーのプロの力を借りたら、「ちょっとやってみようかな」となるのは、自信が溜まってきてるということなんだなって。

そういう力がつくから、近い人には週に1回くらい来てほしいと思います。

 

受給者証(※)がない子たちも材料費だけいただいて、一般参加として受け入れてますきょうだいで一人だけが受給者証があって、でも、きょうだいも一緒に経験させてあげたいというお母さんたちの声を無視できなくて。

 

―それも珍しいですね!きょうだいはもちろん、受給者証は出ないけど発達障がい傾向のあるお子さんなどにも門戸が開かれているって、とてもすばらしいですね。

 

瀧:受給者証を持っていない子でも生きにくそうな子はたくさんいます。その見えないストレスをどう取りのぞくかを考えたとき、目の前にいる大人たちに「助けて」って言える環境があればいいなと思います。そういう点でも受給者証の有無だけで判断したくないのです。

 

(※)「障害児通所受給者証」など、福祉サービスを受けることを認められた場合に自治体から交付される証明書。

 

(写真)畠中家の子どもたちもお料理体験!初めての場所や活動が苦手な自閉スペクトラム症の長男10歳も、弟5歳と一緒ならチャレンジできました!

 

<vol.2に続く>