チャレンジドLIFE代表の畠中直美です。
私たちは今年度、『発達障害のある子どもと防災』をテーマに、全国調査や冊子制作、地域との連携などの活動を続けてきました。
きっかけは、2024年の能登半島地震でした。
帰省中に被災し、強い揺れの中で長男が固まり動けなくなる姿を見て、普段は生活できている子どもでも非常時には行動できなくなる現実を実感しました。
今回のイベントは、この1年間、防災について一緒にご活動してきた草津市危機管理課の津村さん、特定非営利活動法人しがいち防災研究所の岩佐さんにもご参加いただき、保護者・行政・専門家が一緒にこれからの備えを考える場として開催しました。


【全国調査結果の解説】
前半は、京都大学防災研究所の矢守先生に、チャレンジドLIFEが実施した全国調査の結果を解説していただきました。
全国から寄せられた保護者の声から、次の3点が浮かび上がりました。
・一般避難所を選ばない家庭が多数(約5%)
・子どもが一人で被災する可能性が高いが対策がない
・個別避難計画や福祉避難所の認知が低い(2割未満)
多くの家庭が「避難所に行けないかもしれない」という前提で備えを考えている現実が明らかになりました。
矢守先生は、まず「できるかどうか」ではなく「経験があるかどうか」が重要だと話されました。
「非常時の行動は、練習していないことはできません。車で一晩過ごす、避難経路を歩くなど“お試し体験”が最大の備えです。」
さらに、
「子どもに“落ち着いて行動して”と求めるのではなく、普段と似た行動が自然に出る環境を作っておくことが大切です。」
と続けられました。
例えば
・車で過ごす練習をしておく
・警報音を聞く体験をしておく
・避難場所まで一緒に歩いてみる
こうした小さな経験の積み重ねが、パニックを減らし命を守る行動につながります。
また、「完璧な備えは存在しません。大事なのは“できなかった”を事前に知ることです。」という言葉も印象的でした。
うまくいかない経験こそが、本当の備えになるというメッセージに、多くの保護者が安心した表情を見せていました。
完璧な準備を目指すのではなく、家族で試しながら調整していく――
その考え方が、私たちにとって現実的な防災の第一歩だと感じました。
【 矢守先生 × くわばたりえさん 対談】
後半は、アンケートをもとに制作した防災冊子『わが家の防災 はじめのいっぽ』について、矢守先生とくわばたりえさんの対話形式で内容を深掘りしました。


矢守先生
「非常時だから我慢する、という考え方は今は変わってきています。むしろ、安心できるものを意識的に用意することが重要です。」
りえさん
「防災バッグって、水とか食料を入れるイメージでした。でも子どもにとっては、安心できるものの方が大事なんですね。」
矢守先生
「はい。環境が急に変わると不安が強くなります。“いつもと同じ”を一つでも持ち込めると落ち着きやすくなります。」
りえさん
「お菓子やおもちゃを入れていいってことですよね。荷物を準備するんじゃなくて“安心を持っていく”ってことですね。」
また、子どもがパニックになったときの対応についても話題になりました。
矢守先生
「『落ち着いて』と言っても難しいです。落ち着けるきっかけを事前に用意しておくことが大切です。」
りえさん
「大人でも不安なときはイライラしますもんね。子どもならなおさらですよね。」
続いて車中避難についての話になりました。
矢守先生
「いきなり本番でやるのではなく、キャンプのように一度試してみてください。」
りえさん
「やってみて、ダメならダメって分かるだけでも安心になりますよね。“できない”を知るのも準備なんですね。」
さらに、日常生活の話題にも広がりました。
りえさん
「家が散らかっていたら逃げにくいですよね。片付けたらすごく安心感が増えました。」
矢守先生
「断捨離は立派な防災です。日常を整えることが、いざという時の行動を助けます。」
特別な装備や完璧な準備ではなく、普段の生活の延長に防災がある――
そんなメッセージが伝わり、会場全体が大きくうなずく時間となりました。
イベントの締めくくりに、おふたりにご感想をいただきました。
りえさん
「『もしもの時』のために何かするのではなく、普段から地域の人と仲良くなっておく。
自分の子がどんな子かを知ってもらう。そのコミュニティがあれば、“特別な支援”という言葉もいらなくなるのかもしれません。そんなことを学ばせていただいた時間でした。」
矢守先生
「『いつも』と『もしも』。この2つの落差をどれだけ小さくできるかが防災の鍵です。今日を0だとしたら、1にする、2にする。小さなことから積み重ねていきましょう。」
この1年、発達障害×防災をテーマに取り組みを続けてきましたが、今回これほど多くの方に足を運んでいただけたことに、心から感動しています。
防災は、どうしても後回しにされやすいテーマです。けれど、今回の時間を通して、『防災は特別なことではなく、日常の延長線上にあるもの』だと改めて感じました。
障害のある人もない人も、ともに地域の中で安心して、自分らしく暮らしていける社会を目指して。
これからも、一歩ずつ発信と実践を重ねていきたいと思います。










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